冬になると
「血圧が急に高くなったり下がったりする」
「朝と夜で数値が全然違う」
「寒い日にふらつきやすい」
このようなご相談が、高齢の方を中心に増えてきます。
実はこれ、年齢のせいだけではありません。
冬特有の環境変化と、体の調整力の低下が重なって起こる現象です。
なぜ冬に血圧が不安定になりやすいのか
① 寒さによる血管収縮
寒さを感じると、体は熱を逃がさないために血管を収縮させます。
その結果、
血圧が一時的に上がりやすくなります。
特に
- 朝の起床時
- トイレや脱衣所
- 入浴前後
で急激な変動が起こりやすくなります。
② 自律神経の調整力低下
加齢とともに
- 血圧を細かく調整する力
- 寒暖差への対応力
が弱くなります。
冬はこの負担が一気に表に出やすい季節です。
③ 冬の隠れ脱水
冬は喉の渇きを感じにくく、水分摂取が減りがちです。
すると血液が濃くなり、
血圧が上下しやすい状態になります。
東洋医学で考える「冬」と血圧
東洋医学では、冬は「腎(じん)」の季節。
腎は
- 体を温める
- 血圧や水分バランスを調整する
という重要な役割を担っています。
高齢になると腎の力が弱り、
寒さの影響を受けやすくなるため、
血圧の安定性が崩れやすくなります。
証別でみる 血圧が不安定な方の漢方的考え方
◆ 腎陽虚タイプ
特徴
- 強い冷え
- 朝の血圧が低い
- めまい・ふらつき
- むくみ、夜間尿
考え方
体を温め、血圧を支える土台を立て直す。
用いられる漢方
- 真武湯
- 八味地黄丸
- 牛車腎気丸
◆ 腎陰虚タイプ
特徴
- 夕方〜夜に血圧が上がる
- ほてり、動悸
- 口の渇き
- 不眠
考え方
潤いを補い、過剰な緊張を鎮める。
用いられる漢方
- 六味地黄丸
- 知柏地黄丸
◆ 気虚・血虚タイプ
特徴
- 疲れやすい
- 朝の立ちくらみ
- 食欲不振
- 顔色が悪い
考え方
気と血を補い、血圧変動を防ぐ。
用いられる漢方
- 補中益気湯
- 十全大補湯
- 人参養栄湯
◆ 瘀血(おけつ)タイプ
特徴
- 血圧が急に上がる
- 肩こり、頭重感
- 皮膚がくすむ
考え方
血の巡りを改善し、急変を防ぐ。
用いられる漢方
- 桂枝茯苓丸
- 通導散
見落とされやすい「冷え」が主役の血圧変動
◆ 肝虚陽虚タイプ
― 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 ―
特徴
- 手足の冷えが非常に強い
- 冬になると血圧が乱れる
- 緊張すると血圧が上がる
- 末端は冷え、顔はのぼせやすい
考え方
肝は気血の巡りを司ります。
肝の血が不足し、寒さで陽気が巡らなくなると、
血圧が不安定になりやすくなります。
用いられる漢方
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
◆ 腎虚陽虚タイプ
― 真武湯 ―
特徴
- 下半身の冷え
- 朝の低血圧
- めまい・ふらつき
- むくみ、軟便
考え方
腎陽の低下により、
血圧と水分調整がうまくいかない状態。
用いられる漢方
- 真武湯
冬の血圧を安定させるための養生
- 起床後すぐに血圧を測らない
- 首・お腹・足首を冷やさない
- 少量ずつこまめに水分補給
- 朝食を抜かない
- 急激な温度差を避ける
まとめ
冬の血圧変動は、
寒さ × 加齢 × 体質が重なって起こります。
特に
- 冷えが強い
- 冬だけ体調が崩れる
- 血圧が安定しない
という方では、
体質(証)を見極めた漢方的アプローチがとても重要です。
血圧の数字だけで判断せず、
「どこが冷えるのか」「どんな時に乱れるのか」
を大切にしていきましょう。
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夜久漢方薬局・夜久鍼灸院 院長 夜久公也
