胃腸障害と漢方薬

2025年06月07日

はじめに
「胃がもたれる」「お腹が張る」「食欲がわかない」「すぐ下痢になる」
病院で検査しても異常はない。でも、日々の生活にじわじわと支障をきたす、“なんとなく胃腸が悪い”状態。

こうした状態を、西洋医学では「機能性ディスペプシア（FD）」や「過敏性腸症候群（IBS）」と呼びますが、
実際のところ、その原因や治療は一筋縄ではいきません。

そこで注目されているのが、個人の体質や症状の微細な違いを重視する「漢方薬」のアプローチ」です。
今回は、漢方の視点からみた「胃腸の不調」とその対処法をご紹介します。

胃腸の不調は「脾（ひ）」の弱り？

漢方では、胃腸の働きを「脾胃（ひい）」という言葉で表します。
特に「脾」は食べたものから「気（エネルギー）」や「血（けつ）」を作る源。つまり、脾が弱る＝全身が元気を失っていくことを意味します。

胃腸が弱っているサイン：
・朝、食欲がわかない
・食後に眠くなる
・お腹が張る、ガスがたまる
・下痢と便秘を繰り返す
・顔色が悪い、疲れやすい
・舌に歯の跡（歯痕）がある、白い苔がついている

こうした「虚（きょ）」の状態がベースにある胃腸障害には、体を補う漢方薬が基本となります。

ここでは代表的な胃腸症状と、それに対応する漢方薬をご紹介します。

① 食欲がない・すぐにお腹がいっぱいになる
→ 六君子湯（りっくんしとう）
・胃が弱く、気も足りない人向け
・胃もたれや、ゲップ、食欲不振に

② 食べるとすぐ下痢する、緊張でお腹を壊す
→ 桂枝加芍薬湯（けいしかしゃくやくとう）
・腸の動きが過敏で、腹痛を伴う下痢がある人に
・IBSタイプの腹痛・便通異常に

③ ストレスで胃腸の調子が崩れる
→ 半夏瀉心湯（はんげしゃしんとう）
・イライラや不安とともに、みぞおちのつかえ・げっぷ・下痢などが出るときに
・「心と胃はつながっている」という考えに基づく処方

④ お腹が冷えて痛い、下痢気味
→ 人参湯（にんじんとう）
・冷えによる胃痛・下痢に。お腹をあたためて動きを回復
・虚弱体質で冷えやすい人に向く

⑤ お腹が張る・ガスが多い・緊張型の便秘
→ 柴胡疎肝湯（さいこそかんとう）
・ストレスが溜まると胃腸にくるタイプに
・ガス・便秘・腹痛があるが食欲はある人におすすめ

漢方は、「診断名」よりも「人の状態」をみて薬を選びます。
ですから、胃カメラで異常がなかったとしても、症状があるなら漢方は対応できます。

また、最近では「機能性ディスペプシアに六君子湯が有効だった」という臨床研究（RCT）も複数あり、漢方薬の科学的根拠も蓄積されています。

「お腹は第二の脳」と言われるように、胃腸はストレスや感情の影響を非常に受けやすい臓器です。
つまり、「こころが疲れれば、お腹もつかれる」ということ。

そんなとき、西洋薬での対症療法に頼るだけでなく、じっくりと体全体を整えていく漢方のアプローチは、一つの選択肢になりえます。

胃腸の調子がすぐれない、検査では異常がないけど調子が悪い――
そんなときは、ぜひ漢方相談を受けてみてください。体質や症状に応じたあなただけの処方が、きっと見つかるはずです。

夜久漢方薬局・夜久鍼灸院では東洋医学の視点からあなたに合った漢方薬、鍼灸治療を提案し身体の状態を調えお悩みの不調を改善へ導きます。胃腸の症状でお困りの方は、漢方専門の夜久漢方薬局へご相談ください。胃腸に優しい食養生も併せてご提案しています。

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夜久漢方薬局・夜久鍼灸院　院長　夜久公也